計画概要

 材料採取,溶接,各種試験や測定などの方法については各分科会で詳細に検討されている。 データシートに記載される主なデータは日本工業規格による次のような標準試験法により 求められている。
それらは

 各サブテーマの計画概要は以下のようである。
  1. ばらつきを含めた基準的疲れ強さのデータシート  JIS規格の機械構造用鋼について,材料規格の範囲に対応したばらつきを含め, 基準的な疲れ特性を求める。この際,化学成分及び熱処理の差の結果に注目して試験を行う。 得られたデータは現行材料の基準的な疲れ特性を表すものとして, 設計における材料選択の参考となる。
    • 熱処理:材料規格に記載される温度範囲の中央温度で焼ならし及び焼入れ,中央及び上,下限温度で焼戻し,いずれも金材技研で実施
    • 疲れ試験:小型平滑試験片による室温大気中の回転曲げ,ねじり,軸荷重疲れ試験。
    • その他の試験:引張り,衝撃,硬さ試験,並びに必要な化学分析,金属組織学的検査など。
  2. 溶接継手の疲れ強さのデータシート  実用条件内の各種溶接法により作られた溶接継手の疲れ特性を,余盛形状に注目しつつ求める。 得られたデータは実用溶接継手について許容応力を定めるときの参考になる。計画の初期段階に おいては溶接継手の軸荷重疲れ試験方法を標準化するための資料を得る目的で, 試験片板厚,板幅,試験速度を変えて試験する
    • 材種:代表的な溶接構造用鋼。
    • 溶接法:被覆アーク溶接,ガスシールドアーク溶接,サブマージアーク溶接のうち,その材種で通常用いられる溶接法。
    • 継手形式:突合せ溶接継手,一部の材種についてはリブ十字形すみ肉溶接継手も加える。いずれも黒皮余盛付き。
    • 疲れ試験:溶接継手試験片及び対応母材による室温大気中の軸荷重疲れ試験,疲れき裂伝ぱ特性試験。
    • その他の試験:引張り,硬さ試験、余盛形状測定,並びに必要な化学分析,金属組織学的検査など。
  3. 高温疲れ強さのデータシート  対象材種に関する使用の実状に応じ,高温における高サイクル範囲または低サイクル範囲, あるいは両範囲の疲れ特性を求める。高サイクル範囲では特に切欠き感受性, 低サイクル範囲ではひずみ速度依存性に注目して試験を行う。得られたデータは高温用機器の 設計における材料選択並びに許容応力の決定に際し参考となる。
    • 材種:高温において疲れが問題となる規格化された材料。
    • サンプリング:必要に応じ,圧延棒材,板材,鍛造材についてそれぞれ代表的な1チャージ。
    • 疲れ試験:種々の高温度の大気中における高サイクル回転曲げ,低サイクル軸ひずみ制御の疲れ試験。
    • その他の試験:高温引張り並びにクリープ破断試験,必要な化学分析,金属組織学的検査など。


 本計画は疲れデータシート作成の第1段階に関するものであり,試験の進行に伴い 今後見直されることになっている。本計画により得られた結果は「金属材料技術研究所 疲れデ-タシート」として材種またはそれに準ずる単位ごとに出版される。データシートには 原則として標準試験法による結果の生データが,次のように記載される。
  1. Material-Processing details, chemical composition, heat treatments(必要な場合)など
  2. Welding(行った場合)-Procedures, filler material, reinforcement profile, hardness distribution,など
  3. Mechanical properties-Tensile properties, Charpy impact energy, hardness,など
  4. Fatigue properties-Test conditions and specimens, primary test data, mean fatigue strength at prescribed number of cycles, S-N diagrams,など

 なお,上記データシートのほかに,データシート資料が出版される予定である。 これは幾つかのデータシートの一部または全部から抽出したデータを利用に便利な形に加工 して集録し,解析結果や解説を加えることにより,データを実際に使用する場合の 便宜を計ることを狙いとしている。

 金材技研疲れデータシートの概要は以上のようであるが,このような計画を実施し 得るためには,試験の面のみならず,研究面での能力の向上も重要であることは言う までもない。このため関連する分野での研究活動も大いに推進しており,その成果は 金材技研の研究報告をはじめ,各種の学術誌等に随時発表されている。特に疲れに 直接関係するものとしては,統計的疲れ試験及び解析法の研究,疲れにおける切欠き 感受性及びき裂伝ぱ挙動の研究,突合せ溶接継手の疲れ特性の研究,組合せ荷重下の 疲れ特性の研究,繰返し応力ひずみ挙動の研究,疲れ破壊のフラクトグラフィ的研究, クリープ疲れ相互作用も含めた高温疲れ特性の研究などがある。このような研究面での 裏づけがあってこそ,データシート試験の円滑な実行,適確なデータ整理が可能になる のであって,今後とも広く信頼され得るデータを出していくよう努力を続けたいと 考えている。